Pen+ 大いなる可能性を秘めた 下水道のミライ
20世紀は石油をめぐる戦争だった。
21世紀は水をめぐる戦争の時代になるだろう。
久々に更新します。ユカリノです。
冒頭の言葉は、1995年に世界銀行の副総裁であったイスマル・セラゲルディン氏の発言です。蛇口から清潔な飲料水を飲むことのできる日本では正直認識しずらい問題でしょう。私を含めて仕事で上下水に関わる人であれば、20年も昔の発言であったとは思えないくらい時代を先読みした言葉であったと感じるかもしれません。
今回紹介するのは
以前より気になっていた雑誌Pen+(ペンプラス)を入手して読むことができましたので、今回はこの雑誌を紹介したいと思います。
Pen+(ペン・プラス) 大いなる可能性を秘めた 下水道のミライ (メディアハウスムック)
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2015/03/24
- メディア: ムック
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下水道ってあの下水道?
※本誌内容を早く知りたい方は次の見出しまで飛ばして下さい
下水道って認識しずらいものだと思います。普段目にするのはマンホールくらいでしょうか?あまり綺麗なものではないから、意図してそうしているのかな。
下水道って実は2種類あるんです。雨水を流す管、生活排水を流す管、一緒にしている場合を合流式、別々の場合を分流式なんて呼びます。
だから、映画や漫画とかの創作の世界で、マンホールを通って危機一髪逃げ伸びるなんていう場合、あれば分流式の雨水の下水道かな?なんて考えたりします(笑)
テレビや雑誌で、日本のすごい技術!工業、産業の革新!なんて特集を見る機会は少なくないと思いますが、実は下水道も日々進化しています。今回紹介するPen+はそれら進化の一部を紹介している雑誌だと感じました。
どんな雑誌なの?
前置きはこのくらいにして、本題に入ります。
雑誌全体を大雑把に説明すると、下水道に関わる人々がそれぞれのフィールドから下水道について熱く語った内容をまとめています。
下水道に関わる人々を箇条書きすると、市民、ボランティア、行政、設計会社、建設会社、製造メーカ、メンテナンス会社など。
読んでどの辺りが良かった?
あくまで私の視点ですが(プラントエンジニアリング会社の設計業務)
①今の下水道が持つ革新技術を知ることができた。
エネルギー源として下水道を使っている浄化センターの話、農業肥料(窒素、リン等)として下水道を使っているビストロ下水道の話、燃料電池自動車への応用の話などが特に面白かった。なかなか一つの会社だけでは分からないような事、例えば、この技術が業界全体として研究、実証、実用化のどのレベルにあるのかという事が分かりました。
②下水道に関わる考え方、気持ちが分かった。
下水道に関わる人々、特に行政で働く人がどのような考えで仕事をしているのかが分かりました。5年、10年先を考えて、市民のことを考えて、真面目にポジティブに下水道を思い描いている様子が伝わり、自分も気を引き締めて参画していきたいと感じました。
読んでどの辺りが惜しかった?
①行政と会社に偏りあり
どの業界でも地方の人手不足の問題はあると思いますが、下水道で同じです。紹介されている内容はとてもポジティブな内容ばかりなのですが、実際そうでない部分もきっとあって、雑誌のスタンスと違っていたら仕方ないのですが、そういうネガティブな部分もスポットライトを当てて紹介されているととても読み応えがあるんじゃないかと感じました。
②震災の影響を是非もっと掘り下げて
東日本大震災で被災した南蒲生浄化センターの5年間を写真を使って簡単に紹介されていました。それ自体はとても参考になり、むしろ読んで良かったのですが、、、少しだけ知ってしまった分、もっと知りたいなと贅沢を言いたくなってしまいました。見開きでたった2ページは物足りなかった。
③読者が行動できることはないか
本誌内では「市民に下水道を知ってもらうことが大切」と伝えたい人が多いと感じました。だから、紹介された内容をキーワードとして調べていく、という手段はあるのですが、、、「Pen+を読んで知りました」「Pen+で興味をもって見学に来ました」というような要望を気軽に言える、受け入れられるよ、という内容になっていると読者自身が行動し易くなると感じました。
今回は以上とします。
専門誌のように特別に難しい内容(研究論文や法解釈)が載っているわけではないです。写真や図も多く、下水道を知っている人も、知らない人も、軽い気持ちで読んでみて楽しめる内容だと思います。きっと「面白いね」とつぶやきたくなるでしょう。